かぐや姫 /「ひとりきり」~ ふえ続ける温かい拍手 ― 南こうせつさんの50年
「話」をしたくなりました
動画サイトで、かぐや姫の「ひとりきり」(ライブ)を見始めたとき、
イントロで、ピアノの「タン、タン、タタン、タン」を聞き、
会場内から、自然と湧き起こる拍手を聞いていたら、
それだけで、自分の目が涙でいっぱいになってきて、
かぐや姫の「ひとりきり」について、話をしたくなりました。
故郷、竹中の歌です
1972年4月、フォーク・グループ、南こうせつとかぐや姫のLPレコード、
「はじめまして」(ファーストアルバム)が発売されました。
「ひとりきり」は、そのLPレコードのB面1曲目に入っている曲です。
「鳥がないて、川が流れて、野山は今、花が咲き乱れ・・・」と、
こうせつさんの心に残っていた景色が、そのまま言葉になったような歌詞が続きます。
そして、「こんな楽しい夢の様な こんな素敵なところは」という歌詞が示している場所は、
こうせつさんの故郷、大分県の「竹中」です。
こうせつさんの「ある日の思い」
歌詞では、この後、こんな夢のような素敵な空間(場所)が、
「もう今はない、もう今はない・・・」と繰り返されます。
そして、最後はポツリと、「ひとりきり」というつぶやきにも似た言葉で終わります。
「ひとりきり」の作詞、作曲、歌はこうせつさんですが、
この詞は、故郷を離れ、東京で音楽活動を続けていたこうせつさんの、
「ある日の思い」を表現したものなのでしょう。
にぎやかな?「ひとりきり」
さて、曲の方ですが、わたしは、イントロからさりげなく入っているチェロの音が好きです。
こうせつさんの歌声とチェロの音色との「響き合い」が、穏やかでとても温かいのです。
曲の途中からは、かぐや姫のメンバーのパンダさん(山田パンダさん)と、
正やん(伊勢正三さん)のハーモニーとコーラスが入ってきます。
ドラムスも加わり、とてもにぎやかな「ひとりきり」になっていきます。
こうせつさん、レコードの中では、ちっとも「ひとりきり」ではありません。
みんなで作った?「ひとりきり」
同じ1972年の12月には、LPレコード(セカンドアルバム)、
「かぐや姫おんすてーじ」(ライブ盤)が発売されました。
「ひとりきり」は、今度はこのライブのオープニングを飾るA面1曲目に収録されています。
その中の「ひとりきり」は、
こうせつさんの歌声に、メンバーの声やバンドの演奏、ライブ盤ならではの高揚感も加わって、
「ひとりきり」がそのタイトルとは正反対の、みんなで作りあげた「ひとりきり」になっているように聞こえます。
ここでも、こうせつさん、「ひとりきり」じゃないのです。
かぐや姫の解散コンサートとその後
1975年4月、かぐや姫の解散コンサートでも、「ひとりきり」は歌われました。
このときすでに、イントロだけで拍手が起こり、
こうせつさんが歌い始めると、拍手はさらに大きくなりました。
解散コンサートという会場の特別な空気の中で、
ステージ上で次々に歌われる思い出の曲の数々、
それを胸の中に刻み込もうとしているファンの気持ち、
それらを想像するだけで、再び自分の目が涙でいっぱいになってきました。
その後、「再結成」という形で、ファンを楽しませてくれるようになったかぐや姫。
「再結成」するたびに、かぐや姫ファンだけでなく、
かぐや姫のメンバー3人も、「かぐや姫が大好きなんだろうなあ」と思うようになりました。
こうせつさんの大切なパートナー
「ひとりきり」は、イントロだけでなく、
ワンコーラスを歌い終わった後も、
ツーコーラスの後に、新たに加わった間奏が始まった時も、
会場のみなさんの温かい拍手に包まれる曲になりました。
「ひとりきり」が、
どんなときも、こうせつさんを「ひとりきり」にしない、
こうせつさんの大切なパートナーともいえる存在になったのだと思います。
「歌」が好きになりました
約50年間、1つの曲を歌い続けた1人のフォークシンガーがいて、
それを約50年間、聞き続け、待ち続けたファンがいて、
こんなすごいことが、歌の世界にはまだまだたくさんあるのだろうと思うと、
わたしは、ますます歌が好きになりました。
※ かぐや姫の「妹」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。
※ かぐや姫の「けれど生きている」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。
※ かぐや姫の「おはようおやすみ日曜日」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。
※ かぐや姫の「置手紙」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。
※ かぐや姫の「なごり雪」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。
※ かぐや姫のメンバーだった伊勢正三さんが結成した「風」に関する記事については、こちらをどうぞ。
追記:2021年9月12日、フォークデュオ「風」のメンバー、大久保一久さんが亡くなられました。心からご冥福をお祈りいたします。(2021年9月17日追記)