「あいつ」/ フォークデュオ「風」の残したもの ~ マンドリンの音色と「あいつ」が好き

今日は、わたしの思い出の曲の中から、「風」の「あいつ」について話します。

フォークデュオ「風」の結成

正やんと久保やんの二人で

風」は、元かぐや姫」伊勢いせ正三しょうぞうさん(通称:正やん)と元猫」大久保一久かずひささん(通称:久保やん)の2人によるフォークデュオです。

1970年代なかばから後半にかけて活躍しました。

「風」は、1975年結成と言われていますが、1974年12月には、やがてデビューシングルとしてリリースされるかぐや姫時代の隠れたヒット曲、「22才の別れ」シングルバージョンのレコーディングを始めています。

「22才の別れ」が大ヒット

そのデビューシングル「22才の別れ」は、1975年2月5日にリリースされました。

これが、当時のオリコン1位を獲得し、年間レコードセールス70万枚を超える(累計100万枚を超える)大ヒット曲となります。

「風」は、とても幸先のいいスタートをきりました。

初ライブが解散コンサート

また、「風」の初ライブは、1975年に行われたかぐや姫の解散コンサートです。

「えーっ!?解散コンサートが?」と思うかもしれませんが、事実です。

かぐや姫解散コンサート(1975年、東京神田共立講堂)でのMCで、南こうせつさんに、

「かぐや姫の今日のコンサート・・・さよなら、さよならという雰囲気もいいのですが・・・このコンサートをステップにして、これから未来へという感じで、みなさんに風の歌を聞いてもらいたいと思います」

と紹介され、正やんと久保やんは、それぞれの作った曲を、「風」としてステージに立ち、歌ったのでした。

わたしの聞きたい「あいつ」

マンドリン演奏をバックに

ところで、「あいつ」は、1975年6月5日にリリースされたアルバム風-ファーストアルバム」に収録されている曲です。

でも、わたしが聞きたいのは、さっきのかぐや姫解散コンサートのときに歌われた「あいつ」です。

これは、まだアルバム発売前に披露されたとても貴重な音源です。

歌のバックに、わたしの好きな楽器であるマンドリン演奏も入っています。

あくまでも個人的な感想ですが、さりげなく、それでいて表情のあるマンドリン演奏がバックについていることで、「あいつ」という曲の切なさが増し、哀愁までも感じてしまうのです。

幻のライブ音源CD化

その解散コンサートのときの「あいつ」が、何とCD化されました。

「伊勢正三LIVE BEST~風が聴こえる~」(2017年11月8日発売)です。

これには驚きました。

動画サイトでしか、聞くことはできないと考えていたわたしにとって、本当にうれしい出来事でした。

きれいに聞こえるメロディーを

正やんの曲作り

正やんは、昔、こう言っていました。

「歌のうまい人が歌うと、どんな曲でもよく聞こえちゃうものなんですよ。

ところが、僕らはうまく歌がうたえないものだから、メロディのことを人一倍真剣に考えることになる。

下手な者が一朝一夕いっちょういっせきにしてうまくなろうとしても無理な話ですからね。

下手が下手なりに歌っても、キレイに聞こえるようなメロディを作らねばと、それこそ寝食しんしょくを忘れて熟慮熟考じゅくりょじゅっこうするわけです。(笑)」

~『風をたずさえて』(1977年、八曜社)より

初めて作った2曲がスタンダードに

わりとイメージ通りの作品に仕上がった「なごり雪」、一旦作った曲を没にして、改めて徹夜で仕上げた「22才の別れ」が、作曲家正やんとしてのかぐや姫時代のデビュー作品です。

そのデビュー作品が2曲とも「スタンダード」と呼べるほど、人々の心に残る名曲になったのは、本当にすごいことだと思います。

「風」は変わるもの

正やんを見て、聞いて満足

さて、風のサウンドはだんだん変わっていきます。

わたしは、風が活動を休止した後、正やんがソロになったとき、正やんのコンサートを見るために、「宮崎市民会館」に行ったことがあります。

あこがれの正やんを見ることができ、また、当時発売されていたソロのLPレコードに入っていた曲も生で聞くことができて、わたしはとても満足しました。
(しかし、かぐや姫時代や、風時代初期の正やんをイメージしてコンサートに行った知り合いは、「イメージが変わった」としきりにぼやいていました)

いつも変わりつつあるもの

風時代の正やんは、こう語っています。

「最初ぼくらは、2人で生ギターを弾いてるバンドで、わりとフォークという雰囲気でやってきました。

このごろは、ステージでは、エレキを使ったり、バックにバンドをつけたりして、結構ポップな感じでやってるんですけど・・・。

よく昔の方がよかったとか、いや今の方がいいとかいろんなふうに言われるんですけど、ぼくらは、あくまで風っていう名前の通り、いつも変わりつつあるものっていう、そういう自覚がありまして・・・。

そのつどそのつど、その時代その時代の歌を歌っていきたいという、そういうのがぼくら風としての風たる姿勢なわけですけど・・・」

~「風ライブ」(1978年NHKFMスタジオ)のMCより

心地よく吹き抜けていく「風」の曲

その姿勢を貫いた「風」は、実にさわやかで、しなやかなバンドだと思います。

わたしにとって、デビュー当時の「風」も、サウンド志向と言われた活動休止前の「風」も、どの時期の「風」も、「風」には変わりはなく、大好きな存在でした。

ですから、「風」の曲は、今でもわたしの体の中を、心地よく吹き抜けていくのでしょう。

 

 

※ 風の曲、「君と歩いた青春」の思い出については、下記リンクをご覧ください。

 

※ 正やんのかぐや姫時代の曲、「置手紙」については、下記リンクをご覧ください。

 

※ 正やんのかぐや姫時代の曲、「なごり雪」については、下記リンクをご覧ください。

 

追記:2021年9月12日、フォークデュオ「風」のメンバー、大久保一久さんが亡くなられました。心からご冥福をお祈りいたします。(2021年9月17日追記)