かぐや姫 /「置手紙」~「想像の世界」が大きくふくらむ、かぐや姫の「うた物語」との出会い・・・ まだ 二十(はたち)前の君ではありませんが・・・
今日は、わたしの思い出の曲の中から、かぐや姫の「置手紙」についてお話をします。
「置手紙」は、かぐや姫の5枚目のアルバム(LPレコード)「かぐや姫ライブ」(1974年)に収録されている曲です。
「置手紙」の魅力
かぐや姫のアルバム
かぐや姫については、以前の記事でも紹介されていますが、南こうせつさん、山田パンダさん、伊勢正三さんの3人組のフォークグループです。(第2期かぐや姫)
かぐや姫は、1971年にデビュー後、1975年に解散するまでに、6枚のアルバム(LPレコード)をリリースしています。(再結成後のアルバムは除きます)
かぐや姫アルバム(LPレコード)一覧
1.「はじめまして・・・かぐや姫フォーク・セッション」(1972年4月)
2.「かぐや姫おんすてーじ - こうせつ・パンダ・正やん - 」(1972年12月)・・・ライブ盤
3.「かぐや姫 さあど」(1973年7月)
4.「三階建の詩」(1974年3月)
5.「かぐや姫 LIVE」(1974年9月)・・・ライブ盤
6.「the KAGUYAHIME forever(かぐや姫フォーエバー)」(1975年3月)・・・ベスト盤
ライブバージョンだけの曲
1974年9月にリリースされたアルバム「かぐや姫 LIVE」は、そのレコードの帯に、
「楽しかった夏の札幌・名古屋・京都・大阪のかぐや姫リサイタルを一枚のレコードにしました」
と書かれています。
「かぐや姫 LIVE」は、それらのコンサートの中から、京都と大阪でのコンサート(1974年7月に行われました)のライブ音源をレコード化したようです。
さて、今日お話をする思い出の曲、「置手紙」の作詞・作曲・歌は、正やん(伊勢正三さん)です。
この曲は、さきほど紹介した「かぐや姫 LIVE」(1974年9月リリースのライブ盤)に入っている曲で、現在でもスタジオ録音盤はなく、このライブバージョンだけでしか聞けない曲です。
しかも、ライブでの「新曲」発表?ということもあったのでしょう。
この曲が始まる前に、「正やんの歌で『置手紙』っていう歌です」というこうせつさんの曲紹介も(レコードの中に)入っています。
「うた物語」の語り手
「置手紙」のイントロは、「タン タッカ タッカ タッカ」というリズムのアコースティックギターのスリーフィンガー(ピッキング)と、「ミ(E)」の音で始まり、イントロ後半から「ミ」の音が1オクターブ上がるフラットマンドリンのトレモロというシンプルな構成です。
そして、イントロが終わると、「君は まだ たくさんの・・・」と、誰かにささやきかけるような正やんの歌が始まります。
正やんの声は、この「うた物語」の語り手にふさわしい、やさしくてやわらかい声です。
また、マンドリンは、レコードのクレジットによると石川鷹彦さんが演奏しているようですが、「うた物語」のもう一人の語り手として、この曲には欠かせない存在となっています。
そして、サビの部分やエンディングで入るメンバーのハーモニーは、「うた物語」をさらに美しく彩り、正やんの「うた物語」をかぐや姫の「うた物語」へと引き上げてくれています。
ライブ会場での様子は
レコード(いとこから借りたレコードです)を聞いていた当時、わたしは、この曲をヘッドホンをつけてよく聞きました。
ヘッドホンを通して聞こえてくるボーカルやハーモニーの響き、そして、楽器の一つ一つの音を楽しみながら聞きました。
ライブの臨場感も味わいました。
しかし、当時から、「やはり本物のライブは違うのだろうな」と思っていました。
「置手紙」がレコードになる前に、この曲を聞いた人は、どんな感じだったのでしょう。
正やんのボーカルやメンバーのハーモニー、アコースティックギターの音、石川さんのマンドリンの音などは、ライブ会場ではどのように聞こえていたのでしょう。
それらを想像するだけでわくわくしますが、「ライブ会場で実際に聞きたかったな」という気持ちは、今でも心の中に残っています。
「置手紙」で想像したこと
歌の作り手と聞き手の関係
音楽作品が、一旦、作者の手を離れると、後は、聞き手の感覚(受け止め方)に委ねられるというのはよくあることです。
「置手紙」も例外ではなく、聞き手のおかれている環境や今までの体験などに裏打ちされた考え方、感じ方によって、たとえば「歌詞」の受け止め方は人それぞれ違うのでしょう。
「置手紙」という「うた物語」を聞いて、この「うた物語」に登場する人物の思いについて、わたしが想像したことは・・・。
ぼくのほんのひとことが・・・
ここから、想像の世界へ入ります。
(ここでは、歌詞の中にある「まだ二十前の君」ではない、もう少し年上の「君」で想像させていただきます。また、その思いは、一人称のわたしを使って、わたしの思いとして表現していきますので、よろしくお願いします)
自然とお付き合いをするようになった君とぼく。
そんな二人の間で『ぼくのほんのひとことが まだ二十前の君を こんなに苦しめるなんて』というできごとが起こります。
「ぼくのほんのひとこと」って、どんな言葉なのでしょう?
たとえば、こんな言葉でしょうか。
「(ぼくじゃなくて)君にはもっとふさわしい人がいるよ」
この言葉に対するわたしの思いは、たとえば、こんな感じでしょうか。
自分にふさわしいか、そうでないかは、わたしが決めます!
少し頼りないところもあるあなた・・・。
だけど、あなたはわたしにとって、すごく心地よい存在なのです。
あなたがいるという安心感は、引っ込み思案なわたしの性格を、少しずつ前向きなものに変えてくれていたのです。
どこかそこらの窓からすててくれ
場面が変わって、夕暮れ時。
部屋の明かりがついています。
あなたがいるというサインにほっとして、いつものように、今日のできごとをあなたに聞いてもらいたかったわたし。
まさかあなたが、手紙一枚を残していなくなっているなんて・・・。
『これで最後の男のきまぐれとして どこか そこらのまどからすててくれ』
この言葉に対するわたしの思いは、たとえば、こんな感じでしょうか。
・・・、そんなことを急に言われても・・・。
男のきまぐれって何?
そこらの窓ってどこ?
あなたが、すごく無理をしているような気がして、また、すごく悪者ぶっているような気がして、そして、こんなことを言わせているのが自分のせいなのかなって思うと、正直言って、すごく悲しいです。
文字の一つ一つから、あなたの声が聞こえてくるこの手紙を読んで、わたしは今、混乱しています。
君に会わないで行くから・・・
『行く先はぼくの友達にきいてくれ』
こんな言葉を聞くと、わたしの思いは、たとえばこんなふうになるのでしょう。
そう書いてありますが、あなたの行き先は誰にも聞きません。
気持ちの持ち方、気持ちの置き場所がわからず、とにかく混乱しています。
『君に会わないで行くから』
すごい一言です。たとえば、こんな思いになった人も・・・。
別れるっていう経験は、初めてではありませんでしたが、これ以来、人とお付き合いするのが怖くなりました。
お付き合いを始めても、「この人も突然、わたしの前から消えてしまうかもしれない」って考えてしまうのです。
あくまでフィクションです
手紙を読み返しながら、ふと、自分のことを思い返した人もいることでしょう。
たとえば、こんな感じでしょうか。
わたしのことも少し話をさせてください。
わたし、あなたとお付き合いを始めた頃から、急にいわゆる「モテモテ状態」(いろいろな人からお付き合いしたいと言われた)になったことを知っていますか?
もちろん、すべてお断りしていました。
あなたには言っていないので、知らないですよね。
つまり、あなたとお付き合いをしていた頃の自分って、自分で言うのも恥ずかしいのですが、他の人から見ると、ちょっぴり魅力的に見えていたみたいです。
すみません、わたしの自慢話になってしまいました。
もう、いいですね。
このあたりで「うた物語」に登場する人物の思いを、わたしなりに想像するのをやめることにします。
すごくリアリティのある想像になってしまいましたが、あくまで、フィクションです。
わたしと同じかぐや姫ファンの方で、わたしの想像に対して、気分を悪くされた方がいらっしゃいましたら、あやまります。
ごめんなさい。
想像、これからも・・・
せつなくて、やるせなくて、どうしようもなくさびしい「うた物語」もエンディングが近づいてきました。
正やんとメンバーのハーモニー、マンドリンの三連符とトレモロが鳴り響き、アコースティックギターのスリーフィンガー(ピッキング)がゆっくりとしたリズムに変わって、とうとう「うた物語」も終わりました。
最後は、会場のみなさんの拍手です。
今回は、わたしの想像もまじえて、「置手紙」という「うた物語」を紹介させていただきました。
これからも、かぐや姫の「うた物語」を聞きながら、作者やかぐや姫ファンの迷惑にならない程度に、(公開・非公開は別にして)想像の世界をふくらませていきたいと思っています。
追記:「かぐや姫 ベストドリーミン」
通販で注文していたかぐや姫のCD「KAGUYAHIME Best Dreamin'(かぐや姫 ベストドリーミン)」(2010年)が届きました。
2000年1月にリリースされた同名のCDの「2010年リマスター盤」です。
CDの帯には、次のように書いてありました。
「今、明日にもし何か見失うことがあったら思い出して下さい。かぐや姫の世界を・・・
かぐや姫(南こうせつ、山田パンダ、伊勢正三)が自ら選曲した40曲」
この文字を見ただけで、CDを開封する前から涙が出そうになりました。
※ かぐや姫の「妹」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。
※ かぐや姫の「ひとりきり」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。
※ かぐや姫の「けれど生きている」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。
※ かぐや姫の「おはようおやすみ日曜日」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。