かぐや姫 /「なごり雪」~ どことなくぎこちない、やさしい別れの歌 ー「雪」と「言葉」のおくりもの

今日は、わたしの思い出の曲として、かぐやひめ「なごりゆきについて話します。

「なごり雪」は、かぐや姫の4枚目のアルバム(LPレコード)「三階建さんかいだてうた」(1974年3月)の中に入っている曲です。

かぐや姫 との出会い

「三階建の詩」を聞いて

かぐや姫のことを初めて知ったのは、1973年のことです。

かぐや姫が、テレビの歌番組で、当時大ヒットした「神田川かんだがわ」を歌っているのを見たときでした。

そのときは、3人組フォークグループのかぐや姫のメンバーについて、ボーカル担当が、みなみこうせつさんということは知っていました。

でも、あとの2人については、大変申し訳ありませんが、名前を知りませんでした。

メンバー全員の名前を覚えたのは、1974年にリリースされたアルバム「三階建さんかいだてうた」を聞いたときでした。

かぐや姫 に対するイメージが変わった

「神田川」は、哀愁あいしゅうをおびた歌詞とメロディー、そしてバイオリンの響きが胸にしみる曲です。

当時のわたしは、その「神田川」のイメージが強烈きょうれつすぎて、かぐや姫に対しては、さびしく、悲しく、切ない歌を歌うフォークグループというイメージを持っていました。(以前からかぐや姫のことを知っている人からすれば、大きな勘違かんちがいですね)

そのイメージを一変いっぺんさせたのが、「三階建の詩」で聞いた「なごり雪」でした。

この曲は、かぐや姫のメンバーの一人、伊勢いせ正三しょうぞうさんが作詞・作曲して、自身が歌っている曲でした。

「三階建の詩」は、「なごり雪」などの伊勢さんの作品だけでなく、もう一人のメンバーである山田やまだパンダさんの作品、そして南こうせつさんの作品など、個性豊かでバラエティに富んだ作品群が並んでいて、わたしのかぐや姫に対するイメージは大きく変わりました。

すてきな言葉の感覚

「なごり雪」の魅力

「なごり雪」の魅力みりょくにすぐにかれたわたし。

その理由を聞かれても、うまく説明することができません。

あえて言うならば、それまでわたしが抱いていた「別れ」=「さびしく、悲しく、暗い」という固定観念こていかんねんのようなものをこわされたことでしょうか。

そして、「なごり雪」という別れの物語、その中の「君とぼくの世界」がすごくすてきな言葉で描かれていることでしょうか。

等身大の言葉で描く

「なごり雪」には、この物語に登場する「君とぼく」の「別れる前」、「別れる瞬間」、「別れた後」が描かれています。

わたしは、「なごり雪」の中の「君とぼく」の別れが、混じりのないすなおな、等身大とうしんだいの言葉で表現されていることに、すごく親近感しんきんかんをおぼえました。

まるで「なごり雪」を聞いているわたしたちのことを描いてくれているような気持ちにもなりました。

ぎこちない、やさしい別れ

別れること、はなれることは、とてもつらいことですが、そのことを感じさせない伊勢さんの言葉の感覚、本当にすてきだと思います。

 

できれば離ればなれにはなりたくない「君とぼく」。

ところが、何らかのわけがあって、どうしても離れ離れにならざるをなくなった「君とぼく」。

もし、そういう状況になってしまったのであれば、「このような、どことなくぎこちない、やさしい別れもあります・・・」と伊勢さんが描いた「君とぼく」。

 

「なごり雪」という言葉も、伊勢さんの造語ぞうごだそうですが、この曲にぴったりのこれらの言葉の感覚は、繰り返しになりますが、本当にすてきだと思います。

君へのすてきなおくりもの

前奏、間奏から感じるもの

「なごり雪」の前奏は、アコースティックギターのアンサンブルで始まります。

このシンプルで明るい前奏、わたしはすごく好きです。

また、間奏で高らかに響く管楽器かんがっきの音は、「離れ離れになる君とぼくのこれから」を応援しているように、これまた明るく、そして、大らかな感じがします。

「なごり雪」という曲が、もともとメジャー調の曲なので、明るく聞こえるのでしょう。

わたしは、これらのアレンジ(編曲は瀬尾せお一三いちぞうさんが担当しました)に、かぐや姫のメンバーやレコーディングに参加したミュージシャンのみなさん、レコーディングスタッフのみなさんのメッセージを感じます。

大げさに聞こえるかもしれませんが、「なごり雪」という「伊勢さんが描いた別れの物語」を、「ただの別れの物語にさせないよ」というメッセージです。

君はきれいになった

サビの部分で繰り返される歌詞が

「今 春が来て 君はきれいになった

去年よりずっと きれいになった」

という歌詞です。

曲の中で3回登場します。

 

離れ離れになっていく「君」に対する「ぼく」の思い(つぶやき)があふれ出した表現なのでしょうが、こんなすてきな言葉を実際に聞くことなく、「なごり雪」とともに「君」は離れていったのですね。

その場面を想像すると、すごく切なくなってしまうわたしですが、「雪」だけでなく、こんな「すてきな言葉、すてきなおくりもの」をもらって去っていく「君」、絶対に幸せになってください。

その後の「なごり雪」

伊勢さんも背中を押してくれて

かぐや姫のコンサートによく同行どうこうしていたフォークシンガーのイルカさんが、「『なごり雪』が始まると、コンサート会場の雰囲気ががらりと変わるのです」と語っていたのを思い出します。

当時のかぐや姫ファンが、いかに「なごり雪」が好きだったのかを物語るエピソードだと思います。

 

かぐや姫の解散後、かぐや姫やかぐや姫ファンが大切にしてきた「なごり雪」が、イルカさんの曲としてリリースされる話が出てきます。

この話に、イルカさんもかなりとまどったようですが、最後は、作者の伊勢さんも背中を押してくれて、イルカさんの「なごり雪」が世に出ることになりました。

カバー曲が大ヒット

かぐや姫ファンやフォークソングファンの間で、名曲として認められていた「なごり雪」。

1975年11月、「なごり雪」は、かぐや姫のLPレコードとはアレンジを変え(編曲は、松任谷まつとうや正隆まさたかさんが担当しました)、イルカさんのシングルレコードとしてリリースされました。

この「カバー曲」は、リリースされた1975年から1976年にかけて大ヒットしました。

そして「なごり雪」は、イルカさんだけでなく、多くの人にカバーされ、春の名曲として今も歌い継がれています。

 

「なごり雪」を初めて聞いてから50年近くの月日が流れました。

時代はすっかり変わってしまいましたが、「なごり雪」のような「どことなくぎこちない、やさしい別れ」を体験している「君とぼく」が、今でもどこかの駅のホームにいるような気がします。

 

 

 かぐや姫の「妹」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。

 

 かぐや姫の「ひとりきり」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。

 

 かぐや姫の「けれど生きている」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。

 

 かぐや姫の「おはようおやすみ日曜日」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。

 

 かぐや姫の「置手紙」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。

 

※ 伊勢さんが結成した「風」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。