将棋 / 藤井聡太 竜王・名人、「王座」獲得で 全冠制覇! ー 史上初の「8冠同時保持者」へ ~ 2023年度 第71期王座戦 結果(2023年10月)

藤井竜王・名人、王座獲得

名誉王座めいよおうざ」誕生か、「8冠全冠制覇」達成か、で注目された 第71期 将棋王座戦 五番勝負。

その第4局が、2023年10月11日に行われ、挑戦者 の 藤井ふじい聡太そうた竜王りゅうおう名人めいじん が 永瀬ながせ拓矢たくや王座おうざ に勝ち、3勝1敗で「王座」を獲得した。

藤井竜王・名人 は、王座初挑戦でタイトル獲得。

21才2か月での王座獲得は、羽生はぶ善治よしはる九段 の持つ21才11カ月の最年少記録を31年ぶりに更新する史上最年少での王座獲得となった。

とうとう8冠全冠制覇!

また、将棋界のタイトルは、2017年に叡王えいおう戦が「タイトル戦」に昇格(第3期から)したことにより、竜王・名人・王位おうい・叡王・王座・棋王きおう王将おうしょう棋聖きせいの8大タイトル制になっている。

王座を除く7つのタイトルの同時保持者だった藤井竜王・名人は、今回の王座獲得で、史上初の「8冠同時保持」を実現させた。

将棋界の8大タイトルをすべて独占する、前人未到の「8冠全冠制覇」。

21才2カ月での大偉業達成である。

 

※ 第3期叡王戦について・・・一般棋戦から、タイトル戦へ昇格し、2017年6月から開催。タイトル戦は、2018年4月14日~5月26日に開催され、高見たかみ泰地たいち六段 が 金井かない恒太こうた六段 をやぶり、タイトル戦での初代叡王となった。

終局直後の声

終局後のインビューで藤井竜王・名人は、「中盤で差をつけられてしまうという将棋が多くて、実力不足を感じるところが多かったのかなと思う」と、苦しい戦いが続いた今期王座戦について語った。

また、8冠全冠制覇に関しては、「タイトル戦の結果はよかったが、それに見合った力があるかというと、まだまだなのかなと思う。実力をつけていくことが必要だと思っている」と述べた。

一つひとつの結果に一喜一憂することなく、常に向上心を持ち、前へ進み続けようとする藤井8冠らしい受け答えだと感じた。

 

一方、永瀬王座は、「全体的には1局1局全力で挑むことができて、自分なりにベストをつくし、今の自分の全力は出せた。ただ、第3局、第4局とチャンスという局面があったので、どちらかをものにできていれば次につながっていたので、その点は残念だと思う」と今期王座戦について振り返った。

また、「名誉王座」のかかった王座戦にやぶれたことについては、「最初は、それ(名誉王座)を目指してがんばりますということだったが、途中からは、トーナメント戦というか、1局1局ベストを尽くすという方向だった。結果としてはとても残念だと思う」と語った。

そして、無冠になったことについては、「藤井さんと対局して、番勝負が始まる前と後では、だいぶ見えてきたものが違うかなと思う。悲観せずに今まで通り一歩一歩がんばっていきたい」と今後の決意を述べた。

永瀬九段の再出発

永瀬王座は、あと1期王座を獲得すれば、「名誉王座」という永世称号有資格者となるはずだっただけに、大変残念な気持ちだろう。

しかし、名誉王座は、今回永瀬王座が挑んだ連続5期保持の他、通算10期以上保持でも資格を得ることができる。

これからは、永瀬九段として再出発することになるが、永瀬九段には、王座戦はもちろん、トップ棋士として、その他のタイトル戦での活躍も期待したい。

藤井8冠を最後まで苦しめた、独自の研究に裏打ちされた粘り強い永瀬将棋で、今後も将棋ファンを楽しませてほしいと思う。

 

<参考>藤井聡太竜王・名人 8冠への道

 参考資料・・・(公社)日本将棋連盟「棋戦一覧」より。

<参考>歴代「王座」獲得者 ~ 第31期以降

1 中原誠(なかはら・まこと)十六世名人
① 1947年9月2日生 ※2009年3月31日引退
② 1983年(第31期)・・・36才1カ月
③ 登場8回、獲得6期
④ 名誉王座(下記「 王座戦について」参照)

2 塚田泰明(つかだ・やすあき)九段
① 1964年11月16日生
② 1987年(第35期)・・・22才11カ月
③ 登場2回、獲得1期

3 谷川浩司(たにがわ・こうじ)十七世名人
① 1962年4月6日生
② 1990年(第38期)・・・28才5カ月
③ 登場6回、獲得1期

4 福崎文吾(ふくざき・ぶんご)九段
① 1959年12月6日生
② 1991年(第39期)・・・31才10カ月
③ 登場2回、獲得1期

5 羽生善治(はぶ・よしはる)九段(永世称号有資格者)
① 1970年9月27日生 
② 1992年(第40期)・・・21才11カ月
③ 登場26回、獲得24期
④ 名誉王座(下記「 王座戦について」参照)

6 渡辺明(わたなべ・あきら)九段(永世称号有資格者)
① 1984年4月23日生
② 2011年(第59期)・・・27才5カ月
③ 登場3回、獲得1期

7 中村太地(なかむら・たいち)八段
① 1988年6月1日生
② 2017年(第65期)・・・29才4カ月
③ 登場3回、獲得1期

8 斎藤慎太郎(さいとう・しんたろう)八段
① 1993年4月21日生
② 2018年(第66期)・・・25才6カ月
③ 登場2回、獲得1期

9 永瀬拓矢(ながせ・たくや)九段
① 1992年9月5日生
② 2019年(第67期)・・・27才0カ月
③ 登場5回、獲得4期

10 藤井聡太(ふじい・そうた)竜王・名人
① 2002年7月19日生
② 2023年(第71期)・・・21才2カ月(最年少王座)
③ 登場1回、獲得1期

※ ①は、生年月日。
 ②は、王座初獲得年度と年齢。
 ③の王座戦履歴は、2023年10月12日現在。
 参考資料・・・(公社)日本将棋連盟「棋戦データベース」より。

※ 王座戦について
(1)王座戦は、1952年創設、1953年度(1952年10月~1953年9月10日)開催の第1回から、1982年度(1981年9月9日~1982年10月4日)開催の第30回まで一般棋戦でした。
(2)1983年度開催の第31期よりタイトル戦になりました。
(3)王座戦の永世称号である「名誉王座」は、タイトル通算10期以上保持、または、タイトル連続5期保持で資格を得ます。
(4)羽生善治九段は、タイトル連続5期保持で名誉王座となりました。
(5)中原誠十六世名人は、1996年9月に「名誉王座」の称号が制定された際、タイトル戦昇格前の優勝回数10回と、昇格後の獲得6期の実績により、「名誉王座」となりました。
(6)「名誉王座」は、現役のまま、満60才に達すると名乗ることができる永世称号です。

将棋界タイトルホルダー