1年間の思いを詰めこんで ~ 将棋 / 2018年度順位戦C級1組リーグ戦終わる
まず、1カ月前の話から
ドラマチックな直接対決
2月7日、「将棋の神様 !? 成績上位者4人の直接対決 ~ 順位戦について考えた日」という記事を書いた。
4月時点に抽選で対戦相手を決めているにもかかわらず、「年間10局中9局目という大切な対局に、成績上位者4人が直接対決する・・・、なんてドラマチックな展開なんだろう」という、わたしの率直な気持ちを記事にした。
「ドラマチック」という表現が不謹慎に思えるかもしれない。
しかし、その時点まで、「真剣に戦いをすすめてきた棋士だからこそ、このような設定のもとで対局ができるのだ」というそれぞれの棋士への尊敬の念は忘れていない。
昇級の可能性がある5人
2月5日の一斉対局の結果、「C級1組の成績上位者で、昇級枠2人に入る可能性があるのは下の5人にしぼられた」と書いた。
1位 近藤誠也五段 8勝1敗 今期C級1組順位6位
2位 杉本昌隆八段 8勝1敗 今期C級1組順位7位
3位 船江恒平六段 8勝1敗 今期C級1組順位14位
4位 藤井聡太七段 8勝1敗 今期C級1組順位31位
5位 高崎一生六段 7勝2敗 今期C級1組順位4位
※ 2位の杉本さんは、この時点では七段だったが、「七段昇段後、公式戦で190勝すると八段へ昇段」という昇段規定を達成したため、2019年2月22日付で「八段」に昇段した。
自力昇級(自分が勝てば昇級)の可能性があるのは、近藤五段と杉本八段の2人。
残りの3人は、自分が勝ち、自分よりも成績上位者が敗れると、昇級の可能性が出てくる。
最終一斉対局の結果は?
まず、杉本八段から
2019年3月5日、順位戦C級1組の最終一斉対局が行われた。
上位にいる1敗者4人は、今回直接対決もなく、それぞれ違う相手との対局だった。
杉本八段は、千葉幸生七段と対局。
午後10時20分過ぎに、千葉七段が投了。
この時点で、9勝1敗の杉本八段は「B級2組」への昇級が決定した。
八段への昇段、そして再びB級2組への昇級と、2019年は杉本八段にとって新たなスタートの年になったと思う。
今後も弟子の藤井七段に刺激を与えながら、長く活躍し続けてほしいと思う。
船江六段、可能性を残す
残りの昇級枠は1つになった。
船江六段は、金井恒太六段と対局。
午後10時30分過ぎに金井六段が投了。
船江六段も9勝1敗となり、昇級の可能性を残しながら、上位者の結果待ちとなる。
1敗者が2人になったので、ここで、高崎六段の昇級の可能性はなくなった。
藤井七段勝利、でも・・・
藤井七段は、都成竜馬五段と対局。
午後11時過ぎに都成五段が投了。
藤井七段も9勝1敗となったが、上位者2人がすでに勝利しているため、昇級枠の2人には届かず残念。
来期はC級1組の上位にランクされる。
来期の活躍を期待したい。
2人の気迫!に感動
残る昇級枠1つをかけた戦い
1敗者4人のうち、最後まで対局が続いたのが、近藤五段対増田康宏六段の対局。
他の1敗者が全員勝ったので、近藤五段の昇級は、「自分が勝つしかない」という状況になっている。
本人は、当然、そのことは知らない。
目の前の1局に全力を注ぐのみ。
持ち時間を使い切り、両者1分将棋の攻防を繰り広げている若い2人の姿を見て、本当に感動した。
何がここまで、彼らを駆り立てるのだろう。
「1年間の思いのすべてがこの1局に詰まっているんだぞ!」という両者の気迫を感じた。
その対局も、日付が変わった3月6日午前0時過ぎ、増田六段が投了してとうとう終局した。
近藤五段の昇級が決まる
これで、9勝1敗となった近藤五段。
自力での「B級2組」への昇級が決定した。
順位戦通算3期(3年)在籍で、2度目の昇級、そして六段への昇段。
順位戦の通算成績は、26勝4敗となった。
近藤新六段がどこまで勝ち続けるのか、今後の活躍が楽しみだ。
近藤さんの結果待ちだった船江六段は、残念な結果となった。
でも、9局目で全勝の杉本八段(当時七段)に勝ち、最後まで昇級争いにとどまった実力は、他の若手同様、「いつ爆発してもおかしくないほど強力なものだ」と聞く。
来期は順位も上がる。
今後の活躍を期待したい。
がんばれ! プロ棋士のみなさん
盛り上がった順位戦C級1組
9局目を終えた後の「成績上位者2人」が、そのまま勝って「自力昇級」で終わった今年度の順位戦C級1組リーグ戦。
それぞれの棋士に、それぞれのファンや関係者がいて、その結果に一喜一憂していることと思う。
2019年に入り、マスコミ報道などで、「師弟同時昇級」や「藤井七段の順位戦連勝記録」などが注目され、順位戦C級1組はかなり盛り上がった。
天才集団の中で
でも、今回、順位戦C級1組のメンバーを見て真っ先に感じたのは、「このクラスの中で、上位昇級枠2人に入るのは大変」ということだ。
それほど、すごいメンバーが集まっていると思う。
そして、今年度と同じように、今までも、お互いの気迫と気迫がぶつかり合うような戦いが、わたしの知らない世界で繰り広げられていたにちがいない。
将棋の天才が集まった中で、生き残りをかけた戦いが今日も続いている。
がんばれ!将棋のプロ棋士のみなさん。
わたしも、かげながら応援しています。