ドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」/ 主題歌「明日への手紙」~ 聞く人の心の中に、映像を結びつける歌い手・手嶌葵さんの歌
今日は、わたしの思い出の曲の中から、手嶌葵(てしま・あおい)さんの「明日への手紙」について話します。
ただひたすらに 君が好き
わたしが手嶌さんの歌を初めて聞いたのは、テレビCMで流れた曲です。
それは、吉田拓郎(よしだ・たくろう)さんの「流星」(作詞・作曲 吉田拓郎さん、1979年)を手嶌さんがカバーした曲でした。
「流星」の中の、「たしかな事など 何も無く ただひたすらに 君が好き」というフレーズがCMの映像、そしてナレーションとともに流れました。
そのフレーズを久しぶりに聞いた懐かしさにひたりながら、一方では、歌声の「インストルメンタルっぽい」響きがすごく印象に残りました。
「流星」が入っている手嶌さんのアルバム「Collection Blue」(コレクション・ブルー、2011年)も聞きました。
作詞・作曲は池田綾子さん
今回、思い出の曲として紹介する「明日への手紙」の作者(作詞・作曲)は、池田綾子(いけだ・あやこ)さんです。
池田さんは、NHK「みんなのうた」で放送された「数え歌」(作詞・作曲 池田綾子さん、2008年、テレビ初回放送月・2008年10月~11月)を歌っている方です。
この歌を家や学校、保育園・幼稚園などで歌ったことがある方、聞いたことがある方もいらっしゃることでしょう。
また、池田さんは、火野正平(ひの・しょうへい)さんが自転車で旅をするテレビ番組の主題歌「こころたび」(作詞:池田綾子さん、作曲:平井真美子(ひらい・まみこ)さん、2011年)を歌っていることでも知られています。
「数え歌」も「こころたび」も、池田さんの透き通ったきれいな高音の歌声がとてもすてきだと思います。
アルバムの中からテレビドラマへ
「明日への手紙」は、池田さんが手嶌さんにむけて書いた曲で、手嶌さんのアルバム「Ren'dez-vous」(ランデブー、2014年)の中に入っている曲です。
その曲が、テレビドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(2016年1月~3月放送)の主題歌になります。
わたしは、テレビの朝の情報番組で、「明日への手紙」がドラマの主題歌になったことを知りました。
ドラマはリアルタイムで見ることができませんでしたが、曲の方は、何度も聞き、その「繊細な歌声」と「思いを伝えようとするような、語りかけるような歌い方」にとても魅力を感じました。
(※ このテレビドラマの主題歌「明日への手紙」(ドラマバージョン、2016年)が、主題歌になることに決定した後、アレンジを新しくし、また、歌も新たにレコーディングして生まれた曲だと知ったのは、あとになってからでした)
「明日への手紙」と同じような世界から
ドラマの方は、2019年になってDVDで全話見ました。
すごく感動し、もっと早く見ればよかったなあと思いました。(それから今までに、さらに3回ほど全話見ました)
特に、ドラマの最初の方に出てくる、すでに亡くなられた「お母さんからの手紙」と、最後に明らかにされる「お母さんへの手紙」(手紙の後半には、子どもの頃の自分にあてた内容も含まれています)が、とても印象に残りました。
そして、この2つの手紙は、池田さんが書いた詞と曲、手嶌さんが歌った歌、つまり「明日への手紙」が作り出した想像の世界と同じような世界から生まれたように感じました。
迷いながら 揺れながらの「すてきな恋」
わたしは、ドラマを見ながら、この物語に登場する有村架純(ありむら・かすみ)さん演じる杉原音(すぎはら・おと)さんと、高良健吾(こうら・けんご)さん演じる曽田練(そだ・れん)さんの「真っ正直な恋」がうまくいくよう、心の中で何度も応援しました。
「明日への手紙」の歌詞の中にある、「人は迷いながら 揺れながら 歩いていく」という歌詞そのままの二人の歩みに、何度も感情を動かされながら応援を続けました。
二人は、お互いのことを決して、「音」、「練」と呼び合うことはありませんでした。
二人のまわりにいる人々が、二人の名前をそのまま呼んだり、「くん付け」や「ちゃん付け」で呼んだりしても、二人は決して、お互いのことを「下の名前」で呼び合うことはありませんでした。
最後まで、「杉原さん」、「曽田さん」と呼び合いました。
そんな二人の関係・距離感は、見ていてとても新鮮で、わたしを穏やかな気持ちにさせてくれました。
そして、ありきたりな言葉ですが、二人の恋を支えているのは、お互いを大切にしようとする気持ちなのだろうと想像しました。
お互いの「生きてきた道」、「今ある現実」を認め合い、尊重し合う恋、本当にすてきな恋だと思いました。
心の中に映像を結ぶ歌い手として
「物語のよさ」を一生懸命伝えようとする俳優さんやスタッフさんがいることは、ドラマにとって必要不可欠なものだと思っています。
そして、そのことに加え、「物語を体現する曲があること」、「その曲を映像化してくれる歌い手がいること」、これらもドラマにとっては「大事な存在なんだなあ」と、わたしは主題歌を聞きながら思いました。
「歌声を聞いている人の心の中に、映像を結びつけることができる」、そんな歌い手である手嶌さん。
手嶌さんの歌声を聞いた人が思い描いた映像は、それぞれの人が歩んできた人生によって、まったく違う映像だったり、ちょっぴり似たような映像だったりするのでしょうね。
今後もすてきな歌を聞かせてほしいと思います。