将棋・豊島将之名人、史上4人目の竜王名人同時保持者へ ~ 2019年度第32期竜王戦結果
豊島名人が竜王位を獲得
熱戦続きだったタイトル戦
2019年12月6日~7日、第32期竜王戦7番勝負第5局が行われ、挑戦者の豊島将之名人が広瀬章人竜王に143手で勝ち、4勝1敗で初の竜王位を獲得した。
豊島新竜王は、今回の竜王位獲得により、史上4人目の竜王名人同時保持者となった。
終局後のインタビューでは、「かなり際どい将棋が多かったので、ツキがあったのかなと思います」と述べていた豊島新竜王。
その言葉通り、竜王対名人というビッグカードにふさわしい熱戦が続いた本シリーズだった。
少しゆっくりしたい
記者会見で豊島新竜王は、「竜王名人になられた棋士の方は、本当に偉大な棋士の方ばかりなので、自分がここまでできるとは思いませんでした。今年(2019年)も棋聖戦と王位戦で防衛に失敗していて、防衛したことがまだないので、来年(2020年)は、防衛を目標にがんばっていきたいと思います」と述べた。
また、「今、将棋以外で、これがしたいということはありますか?」という記者の問いに、「タイトル戦が4月からほとんど途切れることなく続いていたので、少しゆっくりしたいなと思います」と述べ、タイトル戦やタイトルへの挑戦者決定戦、挑戦者決定リーグ戦などの対局が続いた2019年を振り返った。
広瀬八段、今度は王将戦へ
紙一重のところで競り負けて・・・
一方、竜王位を失った広瀬章人前竜王は、八段として再スタートする。
対局後、広瀬八段は、「結果は残念だったんですけれど、紙一重のところで競り負けてしまって、という勝負が続いていたので、またこのような舞台に戻ってこられるようにがんばっていきたいと思います」と述べ、大盤解説場に残っていたファンから健闘をたたえる大きな拍手を受けた。
広瀬八段は、2018年12月19日、「通算獲得タイトル100期に王手をかけていた」当時の羽生善治竜王を破り、竜王位を獲得した。
また、2019年11月19日には、王将戦挑戦者決定リーグ最終戦の直接対決で、「史上最年少でのタイトル挑戦がかかっていた」藤井聡太七段を破り、王将戦への挑戦権を獲得した。
「相手にとっての大一番」で力を発揮し続けてきた広瀬八段だが、豊島名人の竜王名人同時保持に「待った」をかけることはできなかった。
タイトル獲得と九段昇段
その広瀬八段は、2020年1月12日から始まる2019年度第69期大阪王将杯王将戦7番勝負で渡辺明王将へ挑戦する。
2019年2月から3月にかけて行われた第44期棋王戦5番勝負で渡辺明棋王に1勝3敗で敗れた広瀬八段(当時竜王)。
今回の王将戦も、自身のタイトル獲得通算3期=九段昇段につながるタイトル戦になる。
好勝負を期待したい。
九段への昇段規定
昇段規定では、八段昇段後公式戦250勝、または、タイトル獲得通算3期で九段へ昇段する。ただし、名人は1期、竜王は2期獲得すると九段へ昇段する。広瀬八段のタイトル獲得は、王位1期、竜王1期で現在通算2期。
資料
歴代竜王名人同時保持者
羽生善治 九段
①1994年第52期名人戦で名人位獲得。
1994年第7期竜王戦で竜王位獲得、竜王名人となる。
1995年第53期名人戦防衛、引き続き竜王名人。
1995年第8期竜王戦防衛、引き続き竜王名人。
1996年第54期名人戦防衛、引き続き竜王名人。
1996年第9期竜王戦で竜王位防衛ならず。
②2002年第15期竜王戦で竜王位防衛。
2003年第61期名人戦で名人位獲得、竜王名人となる。
2003年第16期竜王戦で竜王位防衛ならず。
〇 竜王戦登場15回、うち竜王位獲得通算7期、永世竜王(就位は原則引退後)
〇 名人戦登場17回、うち名人位獲得通算9期、十九世名人(襲位は原則引退後)
谷川浩司(たにがわ・こうじ)九段
①1996年第9期竜王戦で竜王位獲得。
1997年第55期名人戦で名人位獲得、竜王名人となる。
1997年第10期竜王戦防衛、引き続き竜王名人。
1998年第56期名人戦で名人位防衛ならず。
〇 竜王戦登場6回、うち竜王位獲得通算4期
〇 名人戦登場11回、うち名人位獲得通算5期、十七世名人(襲位は原則引退後)
森内俊之(もりうち・としゆき)九段
①2003年第16期竜王戦で竜王位獲得。
2004年第62期名人戦で名人位獲得、竜王名人となる。
2004年第17期竜王戦で竜王位防衛ならず。
②2013年第71期名人戦で名人位防衛。
2013年第26期竜王戦で竜王位獲得、竜王名人となる。
2014年第72期名人戦で名人位防衛ならず。
〇 竜王戦登場5回、うち竜王位獲得通算2期
〇 名人戦登場12回、うち名人位獲得通算8期、十八世名人(襲位は原則引退後)
豊島将之 竜王名人
①2019年第77期名人戦(登場1回目)で名人位獲得。
2019年第32期竜王戦(登場1回目)で竜王位獲得、竜王名人となる。
※ 参考資料・・・(公社)日本将棋連盟「棋戦一覧」より、2019年12月31日現在
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