将棋・藤井聡太七段 / 自分とのたたかい ~ 自分を超えるために考え続ける(2019年度順位戦C級1組)
14時間に及ぶ大熱戦
2019年8月6日、将棋順位戦C級1組3回戦、藤井聡太七段対金井恒太六段戦をインターネット中継で観戦した。
結果は、藤井七段が勝利し、これで今期順位戦は3戦3勝となった。
朝10時に開始された対局は、両者持ち時間を使い切ったため、ともに一手1分未満で指すいわゆる「1分将棋」となり、午後11時48分に終局。
約14時間に及ぶ大熱戦であった。
わたしが本格的に観戦を始めたのは午後7時過ぎだったので、わたしも約5時間観戦したことになる。
解説を聞きながら
ネット中継では、両対局者が一手一手に時間をかけて考えているとき、プロ棋士の解説者がこの先の進行予想についてわかりやすく解説してくれていた。
それを聞きながら、よせばいいのに、自分でも考えてみる。
「藤井さんの方を持ちたい・・・」という解説を聞くと、その筋で考えるので、藤井七段優勢かと思える。
「藤井さんが、ここで考えるって変調ですねえ・・・」という解説を聞きながら、「金井先生がこうやると・・・」と、実際に駒を動かしながらの大盤解説が始まると、今度は金井六段の方がよく見える。
タイトル戦経験者
2017年度の第3期叡王戦で高見泰地六段(当時)と、タイトル戦に昇格した初代叡王の座を争った金井六段。
タイトル獲得はならなかったが、佐藤天彦名人(当時)など上位者を破っての決勝進出は見事だった。
「貴公子」とも呼ばれている金井六段。
ていねいな手つきで、将棋盤のマス目の下線に、自分の駒の下部をきちんと揃えて指す一手一手に気品を感じる。
「うん?」の意味
画面内の両対局者の動きが止まった時、「うん?」という解説者の声。
そして、「そうかあ」と再び解説者の声。
解説者が頭の中で考えていることは、わたしにはわからない。
だから、「うん?」の意味も、「そうかあ」もわからない。
解説者の頭の中の将棋盤で、「駒がびゅんびゅん動いているんだろうなあ」ということだけは想像できる。
大盤で駒を動かしてほしいが、彼らは「待ったなし」(指し直しができない)の世界にいるので、どうしても頭の中で考えることが多くなる。
若手の解説者ほど、このような傾向がある。
これは、仕方のないことだろう。
自分とのたたかい
必死で考えている両対局者、それにダブル解説をしている2人のプロ棋士。
みんな自分とたたかっている。
相手がもし自分なら、自分の狙い筋がわかる。
相手がもし自分なら、自分がこう指されるといやだという筋もわかる。
だから、相手は、こう指してくるのではないかと読む。
自分の読みと同じ筋なら勝てる? いや負ける。
自分が負けるのなら、勝ちにつながる違う道を探して再び読み耽る。
自分を超えるために考え続ける。
負けなかった?
やがて、藤井七段が受けに回り、金井六段の方に形勢が傾いたように見えたが、数手で再び形勢が入れ替わったようだ。
このあたりは、わたしにはわからなかった。
1分将棋の秒読みが続く中、とうとう金井六段が投了し、藤井七段が勝った。
藤井七段の終局後のインタビューを聞いていて思ったのは、「勝った」という感じを受けなかったこと。
今日の対局は、「負けなかった」という表現の方が適切かもしれないとわたしは感じた。
実力が拮抗している中、ギリギリの世界で、自分とも戦い続けているプロ棋士のみなさん。
これからも引き続き応援させていただきます。
<資料>
藤井聡太七段略歴
2002年7月19日生まれ、17歳。
2012年9月、6級で奨励会入り。
2016年10月1日四段(プロデビュー)。
2018年2月1日五段、2018年2月17日六段、2018年5月18日七段に昇段。
竜王戦は4組、順位戦はC級1組に所属。
全棋士参加棋戦である「朝日杯将棋オープン戦」第11回(2017年度)優勝、第12回(2018年度)優勝。
第49期新人王戦(2018年度)優勝。
今年度の成績は16勝4敗。(未放映のテレビ対局を除く)
※ 参考資料・・・(公社)日本将棋連盟「棋士データベース」より。年齢・成績・所属は、2019年8月8日現在。
将棋界タイトルホルダー