星のきれいな島で【2】青春“彼ってどんな人”編(ボクとボクらの話)

彼の特徴

みっちゃんが「つきあっちゃえば?」と言った彼。

誰もかっこいいとは言ってくれない。

背はわたしと同じくらい。

体が身軽みがるでうれしいときの表現は「バク宙」。

集中すると回りが見えなくなる。

得意なことは「ものまね」。

今思い浮かぶ彼の特徴はざっとこんな感じ。

途中が抜けちゃう

学校で会ったとき、「一緒に映画でも見る?」という話になり、映画館でデートらしきことをした。

そして、「映画を見た後で、映画館の隣にある店(ファストフード店)に行こう」と約束した。

映画が終わった後、映画館のロビーは大変混雑していた。

わたしは、ロビーで彼を探したが、彼がいる気配がない。

そして、「まさか」と思って、約束していた店に行ってみた。

すると、そこには、「こっち、こっち」と笑顔で手招きする彼がいた。

彼の頭の中は、店に行くという約束を実行することでいっぱいいっぱい。

「約束の店へ、二人で一緒に行こう」というところまで思い至らなかったようだ。

この人は、本当に「途中」が抜け落ちてしまう、人付き合いに関しては不器用な人なんだなあと思った。

何かあるたびに、すぐに泣いてしまう自分。

思わずため息が出てしまう、そんな彼の不器用な行動に、なぜかわたしの目はウルウルしてきた。

店でテーブルをはさんだ彼の席の前に座り、わたしが始めにしたことは、テーブルに置いてあった紙ナプキンで自分の涙をぬぐうことだった。

気になる存在

知り合いは口をそろえて、彼のことを「変な人」と言った。

でも、わたしには気になる存在だった。

教育実習は、偶然、彼と同じ学校だった。

お互い、指導していただいた先生を介して話をするだけで、二人で話したこともなかった。

 

本職の先生たちからの評価はとても高く、「すぐに指導主事になるんじゃない」などと言われていた。

わたしは、人前に出ると緊張してしまうので、多くの人が参観している研究授業が大の苦手だった。

そんなわたしにとって、楽しそうに研究授業をする彼は尊敬すべき存在だった。

心の中が温かくなった

歌まねがうまくて、ギターも器用に弾く。

同じ専門コース(教科課程)のコンパ(交流会)になると、すました顔で、歌まねやものまねを披露し、みんなを楽しませていたらしい。

あるとき、「卒業まであと半年。1度、学科全体で集まってみよう!」という声があがり、コース単位ではなく、学科全体のコンパが開かれることになった。

みっちゃんに誘われ、わたしも学科全体のコンパに参加した。

そのとき、初めて彼の歌を聞き、サービス精神旺盛な彼の芸の数々を見て、なんとなく心の中が温かくなった。

彼は、自分の持ち時間が終わると、すぐにどこかへ消えて行った。

 

※ この物語は、フィクションです。

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