木村一基九段、新王位へ ~「あと1勝」の壁を乗り越える(2019年度第60期王位戦)

木村王位誕生

朝刊で必ず目を通すところは、テレビ番組欄をめくった後の社会面ページ下隅にある囲碁・将棋の勝敗欄。

9月30日朝刊に、「名人戦 順位戦A級 28日」の小さな記事があり、9月28日に行われたA級順位戦、木村きむら王位おうい糸谷いとだに八段の結果(木村王位の勝ち)が掲載されていた。

木村一基かずき九段に王位という名前がついている。

そう、木村九段は、9月25日~26日に行われた第60期王位戦第7局で、豊島とよしま将之まさゆき王位に勝ち、4勝3敗で「王位」のタイトルを獲得した。

これは、木村九段にとって初めてのタイトル獲得で、46才3カ月での「初タイトル獲得」は、有吉ありよし道夫みちお九段が持っていた37才6カ月を大幅に更新する史上最年長記録となった。

ピンチをしのいでの獲得

今までタイトル獲得まであと一歩というところで、残念な結果に終わっていた木村九段。

今回は、出だし2連敗後に2連勝でタイスコアへ戻す。

第5局に敗れ、2勝3敗と王手をかけられたが、第6局、第7局を連勝。

スコア的には、ここ一番でのピンチをしのいでのタイトル獲得であった。

タイトルというものを知り尽くした上で

「タイトルに挑戦する=挑戦者になる」のはごく一部の棋士であり、そのタイトル戦を勝ち、「タイトルホルダーになる」のもその中のほんの一部の棋士だけである。

そのことを知り尽くした上で、タイトル戦で結果が出せないことに対し、木村九段自身にしかわからない「気持ち」が心の中にあったことと思う。

木村九段にとって7回目のタイトル挑戦でつかんだ「タイトル獲得」という今回の結果。

それは、本人はもちろん、多くの木村ファンも「うれしく、ほっとできる」結果になったにちがいない。

2005年の第18期竜王りゅうおう戦で、初めてタイトルに挑戦して以来約14年、とうとう念願がかなった。

豊島名人、今度は挑戦者に

一方、今期名人位を獲得し、3冠となった豊島名人は、棋聖きせい戦の防衛戦に続き、今回の王位戦での防衛戦にやぶれたため、残すところ名人位のみとなった。(名人位を持っていること自体すごいことだが・・・)

しかし、木村王位(当時九段)と挑戦権を争った第32期竜王戦挑戦者決定3番勝負を2勝1敗で勝ち、広瀬ひろせ章人あきひと竜王への挑戦を決めている。

10月11日から始まる竜王戦第1局にむけ、今度は挑戦者として、気持ちを切り替えて臨むことだろう。

<資料>

木村一基王位略歴

1973年6月23日生まれ、46歳。

1985年12月、6級で奨励会しょうれいかい入り。

1997年4月1日四段(プロデビュー)。

1999年4月1日五段、2001年12月17日六段、2003年4月1日七段、2007年4月1日八段、2017年6月26日九段に昇段。

竜王戦は1組、順位戦はA級に所属。

第33期新人王戦(2002年度)優勝。

全棋士参加棋戦である「朝日杯あさひはい将棋オープン戦」第4回(2010年度)優勝。

今年度の成績は16勝12敗。(未放映のテレビ対局を除く)

※ 参考資料・・・(公社)日本将棋連盟「棋士データベース」より。年齢・成績・所属は、2019年10月1日現在。

木村王位とタイトル戦

(1)第18期竜王戦(2005年度)7番勝負
渡辺わたなべあきら竜王・・・0勝4敗

(2)第56期王座おうざ戦(2008年度)5番勝負
羽生はぶ善治よしはる王座・・・0勝3敗

(3)第80期棋聖戦(2009年度)5番勝負
対 羽生善治棋聖・・・2勝3敗
※2勝1敗から2連敗

(4)第50期王位戦(2009年度)7番勝負
深浦ふかうら康市こういち王位・・・3勝4敗
※3連勝から4連敗

(5)第55期王位戦(2014年度)7番勝負
対 羽生善治王位・・・2勝4敗1将棋(引き分け)

(6)第57期王位戦(2016年度)7番勝負
対 羽生善治王位・・・3勝4敗
※3勝2敗から2連敗

(7)第60期王位戦(2019年度)7番勝負
対 豊島将之王位・・・4勝3敗
※2勝3敗から2連勝でタイトル獲得

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