ドラマ「めだか」~「みんなは、みんなの中にいるんだよ」ー 主題歌・スピッツ /「正夢」とわたしの卒業ドラマ
卒業ソング特集の中で
3月になり、テレビで卒業ソング特集を聞く機会が多くなった。
卒業ソングといっても、「実際に自分が卒業するときに歌った歌」から、「卒業を思い浮かべる歌」まで、幅広いイメージでとらえられていると思う。
わたしの場合は、卒業ソングというよりも、「卒業ドラマ」が印象に残っている。
そのドラマは、「めだか」(2004年10月~12月放送)である。
「めだか」は通称
わたしは、2004年当時、このドラマを途中(確か第3話あたり)から見始めたのだが、見事に「はまって」しまった。
主人公は、目黒たか子さん。(演じたのは俳優のミムラさん、現在の芸名は美村里江さん)
高校定時制部の先生である。
目黒たか子先生の通称は、「めだか」。
目黒の「め」と、たか子の「たか」をくっつけて、「めだか」。
小学校のときからの呼び名らしい。
本人がドラマの中のセリフで言っているように、「その他大勢」感?のある通称である。
等身大の魅力
わたしは、それまで数々の学園ドラマを見てきた。(今も見ているが・・・)
それらのドラマでは、みんなをぐいぐい引っ張っていくようなリーダー的存在の先生・生徒が登場するのが定番だった。
しかし、「めだか」には、そんなリーダー性のようなものを感じなかった。
「めだか」の中の目黒先生があまりにも等身大すぎて、そこがかえって魅力的で、わたしは、このドラマに見事に「はまった」のである。
個性あふれる生徒のみなさん
宴会付きの修学旅行、マジックショーを披露した文化祭など、実際の教育現場ではなじみのない行事もあり、見ていてとても楽しかった。
また、少し大げさな設定だと思うが、定時制部の先生や生徒のみなさんが、すごく個性的であった。
ジーンズ姿の泉谷しげるさんや、バリっとスーツを着た小日向文世さんが「生徒役を演じる」ことなど、このドラマならではのことだと思う。
そんな個性あふれる定時制部の生徒のみなさんは、さまざまな事情をかかえながら、学校へ通っている。
自分が納得するまで
目黒先生は、自分自身が納得するまで、生徒たちとかかわり続ける。
それが、中途半端なかかわり方になってしまい、事態はさらに悪化、そのことで生徒の気持ちを落ち込ませたり、自分の気持ちが落ち込んだりすることもあるのだが、それでも前へ進む。
最初から、教育的とか、正解とか、そんな価値観を自分の行動の判断基準にするのではなく、とにかく、「自分の気持ちのモヤモヤする部分」を「何とかしたい」と思って行動するのだ。
現実的にはあり得ない行動かもしれないし、そんなやり方では成り立たないのが教育現場だと思うが、「こういうタイプの先生に救われる生徒もいるかもしれないなあ」とちょっぴり思った。
豊かな表情に癒されて
さて、目黒先生は、実に表情が豊かである。
よく喜び、よく困り、よく泣き、よく怒り、よく笑う。(おまけに、よく食べる)
自分の気持ちが表情としてすぐ外に出る。
そんな表情を見ていると、生徒だけでなく、視聴者であるわたしまで、目黒先生が「先生」ではなく「なかま」に見えてきて、「めだかがんばれ」と応援したくなる。
そうやって、ドラマにどっぷりとはまりながら、逆に目黒先生に自分の気持ちを癒されていることに気づく。
ドラマの中で感じた「思い合い」
また、ドラマの中では、回を追うごとに、先生や生徒の中の誰かが、他の誰かのことを思い、相談し合いながら、行動するシーンが増えていく。
みんな・・・、それは決して「全員」のことではない。
みんなの中の誰かのこと・・・。
みんなの中の誰かが、みんなの中の誰かを思い、相談し合う・・・。
そんな「思い合い」は、やがて、「みんなは、みんなの中にいるんだよ」という気持ちとなって、一人、また一人とまわりに伝わり、広がっていく。
わたしは、そんな「思い合い」を見ていると、ホッとした気持ちになる。
「思い、思い合う」関係、そこから生まれる安心感、信頼感、存在感の広がりを、「めだか」の中に感じる。
「めだか」は、わたしにとって、とても居心地のいいドラマだったと思う。
「めだか」と「正夢」
このドラマの主題歌は、スピッツの「正夢」(作詞:作曲 草野正宗さん、2004年)である。
「正夢」は、ドラマの導入時点(オープニング)で流れ、ドラマの終盤の「ここでお願いという場面」?でも、再び流れる。
少し不安を抱きつつ「正夢」で物語が始まり、最後の「正夢」でその物語が「一件落着」となる。
このドラマにとって、「正夢」は欠かせない存在だ。
校舎の屋上で、ぴょんと軽く跳ねながら笑顔で登場する目黒先生。
同時に「飛び出す絵本」のように、一斉に楽器が鳴って始まる「正夢」のにぎやかなイントロ。
このシーンは、何度も見た(聞いた)が、本当に見事なマッチングだと思う。
「正夢」の歌詞とイメージ
「正夢」の歌詞は、このドラマのために書かれた歌詞ではないのだが、「ずっと まともじゃないと わかってる」という歌詞は、「めだか」と重なって見える部分がある。
わたしから見ると、この歌詞は、「めだか」に登場する個性あふれるキャストの行動と、どうしてもイメージが重なってしまう。
さらに、毎回、オープニングで、卒業写真を撮った後の静止画が出てくるのだが、そのときに聞こえる「あの キラキラの方へ 登っていく」という歌詞も、これまた重なって見える部分がある。
この歌詞を聞きながら、オープニングの映像を見ていると、さまざまなエピソードが1枚の卒業写真に凝縮され、写真に映っている一人ひとりの「これから」が、わたしには本当にキラキラして見える。
わたしの「卒業ドラマ」
「正夢」は、CDが発売された2004年当時から、「正夢」のメロディー、歌詞、草野さんのボーカル、バンドの演奏、ストリングスアレンジなど、「正夢」のすべてが好きで何度も聞いた。
今でも、通勤で使用している自動車の中でよく聞いている。
「正夢」を聞くと、「めだか」のオープニングシーンを思い浮かべる。
卒業写真のシーンも、また、最終回の卒業式後のホームルームのシーンも思い出し、「わたしの卒業ドラマは、やっぱり『めだか』なのだ」と思う。
「めだか」や「正夢」に触れると、自分はもっとやさしくありたい、もっと楽しくありたい、もっと素直でありたいと思う。
本当に不思議なドラマと主題歌だと思う。
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