映画 /「糸」・・・香(かおり)さんと 結(ゆい)さん、つながっていたもう1本の糸 ~「泣いている人がいたら、抱きしめてあげるのよ」
映画「糸」
映画「糸」(監督:瀬々敬久さん、2020年)をビデオで見ました。
W主演の菅田将暉さんと小松菜奈さんが演じた高橋漣さんと園田葵さん。
二人の出会いから始まるこの物語は、切なくて、愛おしくて、平成の30年という時空をあっという間に駆け抜けていきました。
出会ったからこそ
出会ったからこそ知る心地よさと苦しさ・・・。
かけがえのない人、その人と過ごす幸せ。
離れたからこそ
離れたからこそ気づく自分の弱さ・・・。
失意の底にいるのは自分だけと、つい自分を許してしまう感情。
温もりと香り
二人をとりまくたくさんの人生が見せる強さ、優しさ、悲しさを感じて、「人って、生かされているんだ」と気づいた瞬間。
映像からは決して伝わらないはずの温もりと香りが、たくさんの人生から醸し出され、わたしに伝わってきました。
結(ゆい)さんの存在
榮倉奈々さんが演じた桐野香さんは、漣さんが働くチーズ工房の先輩で、二人はやがて結婚し、女の子が生まれます。
結と名付けられた娘さんに、母親の香さんは言います。
「泣いてる人がいたら、抱きしめてあげるのよ」
その人の人生を抱きしめる
結さんは、たくさんの人を抱きしめます。
デパートで買い物をしているときは、お父さんである漣さんを・・・。
病気で亡くなった香さんのお葬式のときは、香さんのお父さん(桐野昭三さん、演:永島敏行さん)とお母さん(桐野春子さん、演:田中美佐子さん)を・・・。
そして、子ども食堂でごはんを食べながら、涙を流す葵さんを・・・。
いろいろな場面で、その人の人生を抱きしめます。
すてきなもう1本の糸
「泣いている人がいたら、抱きしめてあげなさい。お母さんに言われてたから・・・」
「いいお母さんだね」
「うん」
こんなすてきな糸が、物語の中でもう1本つながっていたなんて、驚きと感動で胸がいっぱいになりました。
わたしに、言葉に置き換えようのない「糸」のすてきな響きを感じさせてくれ、わたしにもあった過去の「糸」の物語を思い起こさせてくれました。
映画を見終わった後、中島みゆきさんの「糸」を何度も繰り返し聞きました。
メモ:「糸」
「糸」の作詞・作曲は、中島みゆきさん。
編曲は、瀬尾一三さん。
1992年、アルバム「EASTASIA」に収録。
1998年、テレビドラマの主題歌に起用された後、両A面シングル「命の別名 / 糸」として発表されました。
中島みゆきさんの歌声と、瀬尾一三さんのアレンジがとてもドラマチックで、何度も繰り返し味わいたい名曲だと思います。