グッバイ(Goodbye)から フェアウェル(Farewell)へ ~ エルトン・ジョンとイエロー・ブリック・ロード / 映画「ロケットマン」を見て

今日は、わたしの思い出の曲の中から、エルトン・ジョン(Elton John)の「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」(Goodbye Yellow Brick Road)について話します。

クロコダイル・ロック

エルトン・ジョンの曲を初めて聞いたのは、ラジオ番組で「クロコダイル・ロック」(Crocodile Rock)を聞いたときでした。(確か1972年の年末だったと思います)

軽快なロックのリズム、リズムに乗ったスピード感あふれるボーカルなど、「クロコダイル・ロック」は当時、洋楽ようがくに興味を持ち始めたわたしには、十分すぎるほど「新鮮」で「ポップ」な曲でした。

「クロコダイル・ロック」を聞いていた頃、わたしはまだ、エルトン・ジョンがピアニストだとは知りませんでした。

ダニエル

次に聞いた曲は「ダニエル」(Daniel)でした。

当時、わたしがよく聞いていたラジオ番組は、大体だいたい、ワンコーラスの間奏のあたりで曲の音量が下がり、リクエストハガキが紹介されたあと、曲もしだいにフェードアウト、次のリクエスト曲がスタートするというパターンがほとんどでした。

そんな中、FMラジオから流れた「ダニエル」を、カセットテープにフルサイズで録音することに成功しました。(表現が少しおおげさですが・・・)

そして、間奏が終わってからの後半部分を聞いて思いました。

「いい曲だなあ」。

曲全体を繰り返し聞いているうちに、何ともいえないさびしさを感じました。

歌詞の意味はまったくわからないのですが、エルトン・ジョンが作った1つの切ない物語を読み終わったような気持ちになりました。

※ エルトン・ジョンの「ダニエル」をラジオで久しぶりに聞いた記事は、下記リンクをどうぞ。

今度は、ハードに

やがて、「土曜の夜は僕の生きがい」(Saturday Night's Alright(For Fighting))がラジオから流れるようになりました。

この曲は、イントロからずっとうなり続けるエレキギターの音をはじめ、リズムセクション、ピアノ演奏、そしてたたみかけるようにシャウトするエルトン・ジョンのボーカルなど、「どれもこれもハデで、ハードで、ストレート」。

当時のわたしにとって、とてもインパクトのある曲で、すぐに好きになりました。

音楽誌を読み、エルトン・ジョンの曲の作詞を担当している作詞家のバーニー・トーピン(Bernie Taupin)の存在を知ったのもこの頃でした。

そして、バーニー・トーピンとのコンビで作ったエルトン・ジョンの曲(歌)が、母国のイギリスだけでなく、世界各国でヒットしていることも知りました。

シングルレコードを買う

さて次が、今回お話をする「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」(Goodbye Yellow Brick Road)です。

わたしは、当時、この曲をカセットテープに録音していました。

そして、歌詞の意味もわからないまま、エルトン・ジョンの歌声と同じような歌まね(音まね?)ができるくらい繰り返し聞き、一緒に歌いました。

 

その後、この曲のレコードがどうしても欲しくなりました。

当時は、2枚組のLPレコード「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」(Goodbye Yellow Brick Road:黄昏たそがれのレンガみちも発売されていました。

シングルレコードとLPレコードのどちらを買うかさんざん迷った挙句あげく、値段の関係もあり、シングルレコード(当時500円、LPは2枚組だったので3000円以上だったはずです)を買いました。

 

背中に「ELTON JOHN」と書かれた上着うわぎを着て、少し横を向きながらポスター?(絵?)の中の黄色いレンガ路に足を一歩踏み入れる?エルトン・ジョンの様子が描かれたレコードジャケット。

曲を聞きながら、このレコードジャケットを何度もながめました。

また、レコードジャケットに書かれていた「ロッカ・バラード」という一文いちぶんを見て、「こんな雰囲気の曲(ジャンル)をそう呼ぶんだ」とみょうに納得した思い出があります。

映画「ロケット・マン」を見て

2019年、エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル映画「ロケット・マン」(Rocketman、監督:デクスター・フレッチャー Dexter Fletcher)が公開されました。

映画館で大音量で見たい(聞きたい)と思っていたのですが、家族と一緒に見に行く時間がとれず、結局、今年(2020年)になってDVDで見ました。

感想は、「強烈!」の一言ひとことでした。

エルトン・ジョンの「トップスターならではの孤独感や苦悩」を映画の中で感じました。

また、エルトン・ジョンの歌やパフォーマンスが、「エルトン・ジョンを演じることから始まっている」ということも知りました。

ただの黄色いレンガ路ではない・・・

印象的だったのは、映画の後半で、「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」をバーニー・トーピン役のジェイミー・ベル(Jamie Bell)が歌い始めた場面でした。

そのあとを引き継ぐように、エルトン・ジョン役のタロン・エジャトン(Taron Egerton:タロン・エガートン)も、やがてこの曲の続きを歌い始めます。

日本語の字幕を見ながら、二人の歌を聞いたのですが、イエロー・ブリック・ロードは、ただの黄色いレンガ路ではありませんでした。

 

後でわたしも調べてみましたが、イエロー・ブリック・ロードには、きらびやかな世界(そこへ続く道)という意味もあるようです。

そのイエロー・ブリック・ロードに「グッバイ」(さよなら)、というのがこの曲です。

バーニー・トーピンは、どんな思いでこの詞をエルトン・ジョンに向けて書いたのでしょう。

また、エルトン・ジョンはどんな思いでこの詞を曲にしたのでしょう。(多くの人がカバーする名曲を作ってしまいました)

このときの二人の思いは、やはり、当時の二人にしかわからないのでしょうね。

映画の中の音楽に感動

映画の話に戻ります。

わたしは、映画(この2人のやりとり)を見たことで、「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」の奥深さに触れたような気がしました。

また、映画は、歌詞の意味だけでなく、「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」のもう一つの世界をわたしに見せて(聞かせて)くれました。

レコードでの「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」は、最後はハーモニーの部分(Ah・・・)で余韻を残しながら終わります。

しかし、映画では、最後のハーモニー(Ah・・・)の後に、フルオーケストラによるきれいな音楽が続いていくのです。

映画が連れて行ってくれた「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」の新しい世界でした。

 

映画の中でのエルトン・ジョン(タロン・エジャトン)の映像と、「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」のエンディング。

映像と音楽が見事に重なり、わたしはすごく感動しました。

※ わたしが今回、「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード」を思い出の曲として紹介しようと思ったのは、映画の中でこの音楽が流れる場面を見た(聞いた)ことがきっかけです。

グッバイ から フェアウェル へ

さて、エルトン・ジョンは、2018年9月から最後のワールドツアー「Farewell Yellow Brick Road」(2021年までの3年間、その後音楽活動は続けるが、ツアーからは引退)を始めました。

※ 新型ウイルス感染症の影響で、2020年ツアーの予定は延期になっているようです。(2020年9月13日現在)

 

動画サイトで、ツアーのライブ映像を見ました。

最後の曲を歌い終わった後、観客の声援にこたえるように手をふり、ステージ上方じょうほうの奥へ消えていくエルトン・ジョン。

やがてスクリーンには、背中に「ELTON JOHN」とかかれた上着を着て、イエロー・ブリック・ロード?をゆっくりと歩くエルトン・ジョンの後ろ姿。

 

その後ろ姿を見たわたしは、「エルトン・ジョンそのものの物語」(第1部)を読み終わったようなさびしさを感じました。

そして、「本当にこれで Farewell(フェアウェル、お別れ)なんだなあ」と思いました。

わたしの「1970年代の憧れ」が・・・

2018年9月、ポール・サイモン(Paul Simon)がツアーから引退しました。

さらに今回のエルトン・ジョンのツアーからの引退表明。

わたしの「1970年代のあこがれ」がつぎつぎと姿を見せなくなるのはさびしいことですが、これからは、ツアーという形ではなく、別の形(例えば、楽曲の発表やゲストとしてのライブへの出演など)でファンを楽しませてくれることを願っています。

 

※ ポール・サイモンの「アメリカの歌」に関する記事は、下記リンクをどうぞ。