「星よりも遠くへ」/ 星空を見て、思い出す ~ 震災を風化させないとりくみ
星が好きになる
担任の先生の影響で
中学生のとき、理科の先生だった担任の先生から、星の話、宇宙の話をよく聞かされた。
話を聞いた後、空を眺めては、わたしの見ている宇宙のどこかから、逆に自分がいる太陽系を見ている人がいると想像するだけでわくわくした。
また、先生は、アマチュア天文家の関勉さんの話をよくされていた。
先生の話を聞き、将来は自分も彗星を発見し、星に自分の名前をつけてみたいと単純に思った。
星空は美しいもの
家に、「天文学への招待」(著者は天文学者の村山定男さん・天体写真家の藤井旭さん)という本がある。
もっと詳しく宇宙のことが知りたいと思い、購入した本だった。
その本で、プレアデス星団(和名:すばる)の青白く輝いている写真を見た。
その美しさに思わずため息が出た。
普段見ている夜空に、こんなきれいな星が混じっていることを初めて知った。
宇宙の神秘に惹かれて
本の奥付には、1974年4月30日第12刷とある。
ずいぶん昔の本で、しかも、本のページのあちこちにアンダーラインも引かれている。
美しい宇宙の神秘に強く惹かれ、将来は星に関する仕事がしたいと考えていた当時の自分がうかがえる。
しかし、現実は厳しく、夢は夢で終わった。
でも、星は何十年経った今でも、そんなわたしの前に変わらない姿で現れてくれる。
星空を架け橋に
震災の日の星空
2019年3月11日、テレビで、震災ドキュメンタリー「あの日の星空」を見た。
東日本大震災によって引き起こされた大停電の中、真っ暗な街に満天の星空が現れた。
震災によって一瞬にして変わり果てた姿になった地上とは、あまりにもかけ離れた美しい星空だったそうだ。
仙台市天文台のとりくみ
仙台市天文台は、その星空と被災者のつながりを後世に伝えていくとりくみとして、プラネタリウム番組を制作した。
2012年3月に公開されたこのプラネタリウム番組「星空とともに」は、今、全国各地のプラネタリウムでも投影されているという。
そして、今年、「星空とともに」の第二章として、1年間かけて被災者の話を聞き、その思いをプラネタリウムにのせて朗読する番組「星よりも遠くへ」が7年ぶりに制作され、公開された。
第二章の制作にあたって
仙台市天文台の大江宏典さんは、
「1作目がどちらかというと被災したみなさんに向けて作った番組だった。
それを全国の方々に見てもらうということで、伝え方が少し変わってくるのではないかと考えた。
また、7年という歳月が経ち、当時と今とで、被災地の様子も被災者の方々の気持ちも、伝える側の自分たちの気持ちも変化があったので、今を伝えるということで、新たに伝え方を考えた」
と第二章の制作に向けたとりくみについて話している。(2019年3月10日夜のNHKラジオ番組)
複雑な気持ちが伝わって
テレビ番組では、プラネタリウム番組内の朗読で紹介された被災者のみなさんへの取材が行われていた。
あの日の星空を架け橋にして、当時の思いと今の思いが行き来しているみなさんの複雑な心が、当時のエピソードとともに痛いほど伝わってきた。
きっと、出口の見えない心の葛藤に苦しまれたことだろう。
震災を体験していないわたしにもそのことが十分に伝わる番組だった。
同じ星空を見て・・・
被災者の方々は
被災者の方の中には、あの日の星空のことは、「もう二度と思い出したくない」という人も当然いるだろう。
あるいは、星空によって、「気持ちの整理をつけました」という人もいるだろう。
違うことを思いながら
この番組を見た後、わたしも夜空を見上げた。
いつものように、南側の空しか見えなかったが、3月らしく、天空に冬を感じさせるきれいな星空だった。
今、たくさんの人が夜空を見ているんだろうなあと思った。
そして、それぞれ違うことを思いながら、星を見つめているんだろうなあと想像した。
復興が進むよう願っています
今回の番組を見て、星空を見ることでも、被災者や被災地のことを思うことができると知った。
きれいな星空を見て、感じて、思い出すことも、「震災を風化させないとりくみのひとつ」だと思った。
東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、行方不明の方々の捜索や被災地の復興へのとりくみが今後も進むことを願っています。